後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 アイラから本を受け取ったエリーシャは、それを書棚におさめた。

「そのうち父も戻ってくるでしょうし――あの人、何してるのかしら。しばらく連絡ないんですけど」

 皇女宮に戻ってから、父はまた再び出かけてしまっている。このところ連絡はなかった。

「カーラをはじめとした宮廷魔術師を使えるようにおじい様にお願いすることにしたの。ダーシーがまかせろっていうからまかせたわ」

「カーラがこっちについてくれると楽ですね――しかし、エリーシャ様」

 このところ皇后が動きを見せないのが気になる。ベリンダは自分が皇后宮を偵察に行くことを提案した。

「偵察ってどうやってよ?」
「こちらの宮にいる侍女は若い娘ばかりですし。皇后宮の方も似たようなものですよ――ばばあはばばあ同士で話が合うと言うことです」

 ばばあという年齢ではないが、たしかにベリンダはこの宮にいる侍女の中では圧倒的に年齢が高い。一人で皇女宮で働く者たちの平均年齢を上げている。

「皇女殿下のワインを若干くすねることになりますが」

 ベリンダはにやりとした。
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