後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「くすねなくていいわよ。堂々と持って行きなさい――あぁ、くすねていいわよってことにしておきましょ。それと。この間、干し肉が献上されたの。ワインに合うからそれも『くすねて』いったらいいわ」

「ありがとうございます。それではさっそく今夜にでも。今夜エリーシャ様はダーシー様と『仲睦まじく』過ごしていただけると大変にありがたいのですが」

「えー」

 とたんにエリーシャは渋い顔になる。

「あれといちゃいちゃするのはヤダ」

「いちゃつかなくてもけっこうです。皇女宮で他人を追い出していただければ、こちらで邪推させてもらうので」

 けろりとした顔でベリンダは言う。

「ヤダヤダヤダ」
「あれ? でも、エリーシャ様、ダーシー様と婚約してませんでしたっけ?」
「……忘れてたというか忘れたい」

 アイラは忘れかけていたのだが、ダーシーはエリーシャの婚約者だ。だからこそ、この宮への出入りも許されている。

「あぁもう、やってやるわよ!」
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