後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
静かな攻防戦
アイラが客間に入ると、エリーシャとダーシーはテーブルを挟んで向かい合っていた。
二人の間には激しい攻防戦が交わされている――テーブル越しにエリーシャの手を握ろうとするダーシーと、それを阻止しようとするエリーシャと。
「何やってるんですか、ダーシー様」
「アイラか。いや、愛しの婚約者様が手を握ることすら許してくれなくてね――」
「ねえ、ダーシー。テーブルごと蹴り上げてほしい?」
「それはそれで幸――」
テーブル越しにスリッパがダーシーの頭に炸裂する。今は靴を履いているはずで、そのスリッパはどこから取り出したのかと思わずアイラはつっこんだ。
「エリーシャ様、ご報告です」
その状況にまったく動じていないベリンダが淡々と報告を始める。この状況でそうしていられることにアイラは驚いたけれど、ベリンダは気にした様子もなかった。
「皇后宮の侍女の口を割らせるのは簡単でしたよ。『くすねさせて』いただいたワインがたいそう役に立ちました」
「あら、そう。必要なら言って。いくらでもくすねてもらってかまわないから」
「あまりしょっちゅうやるとありがたみが失せますので」
二人の間には激しい攻防戦が交わされている――テーブル越しにエリーシャの手を握ろうとするダーシーと、それを阻止しようとするエリーシャと。
「何やってるんですか、ダーシー様」
「アイラか。いや、愛しの婚約者様が手を握ることすら許してくれなくてね――」
「ねえ、ダーシー。テーブルごと蹴り上げてほしい?」
「それはそれで幸――」
テーブル越しにスリッパがダーシーの頭に炸裂する。今は靴を履いているはずで、そのスリッパはどこから取り出したのかと思わずアイラはつっこんだ。
「エリーシャ様、ご報告です」
その状況にまったく動じていないベリンダが淡々と報告を始める。この状況でそうしていられることにアイラは驚いたけれど、ベリンダは気にした様子もなかった。
「皇后宮の侍女の口を割らせるのは簡単でしたよ。『くすねさせて』いただいたワインがたいそう役に立ちました」
「あら、そう。必要なら言って。いくらでもくすねてもらってかまわないから」
「あまりしょっちゅうやるとありがたみが失せますので」