後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「……ダーレーンで何があったのかしら」

 エリーシャは唇を尖らせた。密偵は捕まるし、後から調査にやったアイラたちはセシリーと鉢合わせするし、で調査といってもたいして進んでいない。

「セシリーというのが、前国王の関係者――隠し子ではないかという噂が広まっているようですよ。不思議な力を持つ彼女を粗末に扱ったために、ダーレーン王族が次々に死んでいるのだと――皇后陛下のところにはそんな噂が入っているようです」

「あらまあ」

 エリーシャは目を丸くした。アイラの目もつられて丸くなる。

「おかげで、このところ皇后陛下の機嫌が悪くて大変だと、皇后宮の侍女がこぼしていました。飼い犬に手を噛まれたとか何とか」

「裏切られたってことなのかしら」

「さあ……機嫌の悪さの理由はそれだけではありません」

 ベリンダの言葉に、ダーシーの目が鋭さを増した。

「皇后陛下のお身体にも異変が」

「なんですって?」
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