後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「もー、昼間からお酒飲んでていいんでしょうかねぇ?」

 エリーシャの居間にもらってきた料理を並べ、グラスを出しながらアイラは嘆息する。

「いいのよ、だって暇で暇で退屈なんだもの」

 こんな状況であるから、エリーシャも公務は極力減らし、皇女宮からほとんど出ることはなかった。祖父である皇帝から借りているジェンセンと、自分の密偵たちにダーレーンを探らせている。

「……父の魔術書もたくさんあるんですけど」
「それは専門家にまかせるわ、ねえベリンダ?」

 ベリンダは主に対しているのとは信じられないようないい加減な仕草で、肩をすくめた。

「お許しをいただけるのならば、書庫にこもりたいと思いますが」

「ちょっと待ってて。もうすぐジェンセン・ヨークが来るから――アイラ、お茶をいれて」

「かしこまりました」

 アイラがお茶の用意を始めると、エリーシャは側の棚をさす。

「そこに朝もらってきたクッキーが入ってるからそれもテーブルに出しておいて。ジェンセンは飲まない――」
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