後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「待たせて悪かったわね、話を続けて」

 エリーシャが飛び出した後、残された面々がどんな話をしていたのかアイラは知らない。
 
 けれど、彼らは何事もなかったかのように戻ってきたエリーシャを受け入れた。

「ねえ、父さん。蘇ったクリスティアン様がさらに操られているという可能性はないの? わたしはそういうのよくわからないけど、人間の意識をのっとるのはそれほど難しい話じゃないんでしょ?」

 それはダーシーの例を見ていればわかる。彼はセシリーの影響下にあった状態で、皇宮に出入りすることができた。皇宮には結界による警備体制が敷かれているにも関わらずだ。

「……そうだな、それも理論上は可能だと思うよ。でも、その可能性もゼロだね」

 父はアイラの考えを頭から否定したりしなかった。可能性としてはある、と考える姿勢を見せてくれただけだけれど。

「言っただろ。父さんはクリスティアン様と直接会ったんだ。その上で本人が自らの意志で元の肉体に戻っている、偽物じゃないということを確認したんだ」
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