後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「応急処置したって言ったでしょ! あんたもジェンセンもカーラも全員シモンの弟子なんだから――シモンと違う術式の結界が気持ち悪くてもしょうがないじゃない! だけど、シモンの術式とは違うから攻撃してきた奴らも解くのに時間がかかるはず――解けないと思いたいけれど」

ベリンダを押しのけると、ユージェニーはアイラ――ではなく、アイラの後ろにいるエリーシャに向かって膝をつき、頭を垂れた。

「ユージェニー・コルスでございます。エリーシャ様。しばらくお待ちいただけますか――皇宮内に敵が入り込みました。わたくしの結界で、皇女宮と皇帝宮だけはかろうじて守っておりますが――いざという時は、そこの魔方陣で外にお逃げください」

 てっきり裏切ったのだと思っていたのに。短剣を構えたままのアイラは、ユージェニーにどう対応したらいいのかわからなくて、その剣を握ったまま立ち尽くしていた。

「ユージェニーとやら。敵、とは?」

 ダーシーの腕の中にいるエリーシャは、平然としたままユージェニーに問い返す。
< 365 / 394 >

この作品をシェア

pagetop