後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「違うわ、クリスティアン。わたしがあなたを敵に回すのではない――あなたが全ての人間を、精霊を、この世界そのものを敵に回すのよ。だって、そうでしょ? 今のあなたの存在は不自然なものなのだから」

 エリーシャがそう言うと、クリスティアンが苛立ったように眉を寄せる。

「だって、そうでしょ? あなたの肉体を維持するためにいったいどれだけの人を犠牲にするの? 死者はおとなしく眠っているべきだわ」

「聞いたような口をきくな!」

 今までエリーシャに穏やかに対峙していたクリスティアンが、不意に大声を上げた。

「君に何がわかる? 俺が誰に殺されたか――それを聞いても、まだそんなことを言うか?」

 クリスティアンは一歩前に出て、エリーシャに指を突きつける。

「皇后だ! 君と結婚して、女帝の夫になる俺が彼女には邪魔だった。だから――」

「……おばあ様が……」

 呆然として、エリーシャは目を見開く。確かにダーレーンの血を引いている皇后オクタヴィアにとっては、クリスティアンは邪魔者だっただろう。
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