後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「光の指輪よ、照らせ、そして正しき道を開け」

 今まで黙っていたべリンダの声が、部屋の空気を引き裂いた。

「冥界の鎖よ、さまよう魂を縛り付けよ、死者は死者の国に――帰れ!」

 その声にユージェニーの声が重なる。

「――これは! 図ったな、エリーシャ!」
「……そんなつもりはないわ」

 クリスティアンを見つめるエリーシャが何を考えているのか、それを悟ることはできなかった。
 
 ユージェニーの手によって消されていた魔方陣が、再び床に浮かび上がっている。アイラの引いた線がまばゆく光り輝き、そしてそこから姿を現した輝く鎖が、クリスティアンの身体にまとわりつく。

「この――! こんなところに魔方陣が仕掛けられているとは!」

 くそっと舌打ちして、クリスティアンはアイラには聞き取れない言葉を叫ぶ。魔方陣がさらに光を強めたかと思うと、彼の姿は消え失せていた。
 
「やったか?」

 カーラをかついだジェンセンが部屋へ飛び込んできた時、クリスティアンの最後の声が響き渡った。
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