後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「わたしは大丈夫。それより、おじい様は? 皇帝宮は無事?」
「――はい」
「それならよかった。おばあ様とセルヴィスは?」
「無事です。セルヴィス様はお出かけになっていたので――」

 全員の無事を確認したところでエリーシャは立ち上がった。

「ダーシー」

 エリーシャの方から呼びかけられ、ダーシーは慌てて膝をつく。

「婚約を解消してもいいわよ。このままここにいれば、あなたも巻き込まれることになりかねない。ここを出て、どこか遠くへ――」

「いえ。わたしはここに。命をかけてお守りします――そう誓いました」
「あなたじゃ役に立たないけど?」

 それでも、いつもの彼の言葉に安心したようでエリーシャの表情が幾分晴れやかなものへと変化した。

「カーラの手当てをしてあげて。それから――そこを片付けて」

 どうやらこのままここで今後について話し合うつもりらしい。そう悟ったアイラは、壁際に寄せた敷物を黙々と戻し始めた。焦げた床については今できることはないから、後回しにする。
< 377 / 394 >

この作品をシェア

pagetop