後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 攻撃を受けたのはこの宮だけで、ファナとイリアも無事らしい。皇宮に仕える魔術師たちが結界を急いで修復しているという話だった。

 傷の手当てをしてもらったカーラは、並べたクッションに寄りかかるようにして眠りに落ちている。彼が一人で動けるようになるまでには数週間かかるだろう。

「ジェンセン、ベリンダ、ユージェニー。今のクリスティアンは、あなたたちの目から見てどう?」

 皆の前にお茶が配られるのを待って、エリーシャは口を開いた。

「恐るべき敵です。エリーシャ様。クリスティアン様は、タラゴナ皇室の血を引いている。この宮に施されている結界も、彼なら簡単に破壊することができる――現に破壊されましたが」

 ジェンセンは渋い顔をしていた。彼の結界が破られることなんてなかったのに。

「魔術師としての才能で言えば、わたしのはるか上だ。どうやって知識を溜め込んだのかまではわからないけれど」

「あら、それならそれほど難しくないでしょう。何故、セシリーが彼を生き返らせるまで二年かけたのだと思う? 恐らく、魂に直接叩き込んだのよ。セシリーの持つ全ての技術を」
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