後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 考え込んでいるベリンダにさらりと言ってのけると、ユージェニーはため息をついた。

「それにしても、厄介ねー。クリスティアンは、セシリーと同等ってことでしょ。中級魔術師くらいだと思っていたのに。光の精霊を閉じ込めた指輪まで借りたのに逃げられるんだもの」

「――壊れちゃったじゃない!」

 横からアイラが口を挟んだ。

「お黙り、小娘。光の魔法は不得手なんだからしょうがないでしょ!」
「……そうね、死体を操るくらいだから闇の方が得意?」
「言っとくけど、それはあなたの父親だって得意なんですからね!」

 不毛なやりとりを広げているアイラとユージェニーに室内にいる全員の目が注がれる。生暖かい視線に気が付いて、ようやく二人とも黙った。

 アイラはベリンダがいれてくれたお茶にたっぷりと砂糖を放り込んだ。これからどうすればいいのか――静かに紅茶をかき回してエリーシャの言葉を待つ。

「ユージェニー」

 エリーシャが口を開いた。

「あなたは、これから先もわたしに協力してくれるつもりなの?」


「精いっぱい務めさせていただきますわ――女帝の槍をお借りしなければなりませんもの」

 気取った口調でユージェニーは言う。八十過ぎてるならもう十分生きただろうになぁとアイラはとても失礼な感想を抱いたのだけれど、さすがにそれを口にするのは遠慮しておいた。
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