後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「後宮を出る以上、守りは完全にしておきたいのよ。命を落とすのはごめんだもの。クリスティアンとセシリーが、わたしとセルヴィスのどちらを先に狙うのかはわからないけれど、このまま皇女宮にいたんじゃ身動き取れないわ」

「……よろしいのですか」

 この男にしては珍しく真面目な顔でジェンセンがたずねた。

「いい。セルヴィスにこの国を任せることはできないと思っていたけれど、それより先にやらなきゃいけないことがあるもの。死者の魂をもてあそぶ輩をこの国に入れるわけにはいかないわ。だって、わたしは皇女なんだもの」

 決断したエリーシャは、きっぱりと言い切った。それから隣にいる婚約者の顔を見上げる。

「ねえ、もう一度聞くわよ? わたしは女帝の座を諦めるけれど、あなたはどうする?」

「わたしの返事も変わりませんよ」

 エリーシャと同じようにきっぱりとした態度で言い返したダーシーに、アイラは少しだけ驚かされた。
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