後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「悪いわね、二人とも」

 エリーシャが二人にそう言うと、ジェンセンは胸に手を当てて一礼して見せた。

「さあ、忙しくなるわよ。皆、警戒は怠らないように――カーラはどうしようかしら……」

 意識を失っているカーラをエリーシャが見やると、ダーシーは肩をすくめた。

「睡蓮邸でお預かりいたしましょう。一人増えても、二人増えてもたいして変わりませんしね」

「そうね、じゃあ、お願い」

 エリーシャの瞳がアイラの瞳とぶつかった。

「……頼むわね」
「……はい」

 状況は圧倒的に不利だ。でも、エリーシャはまだ敗北宣言をしていない。
 
 ――それならば、アイラはアイラの役割を果たそう。アイラにたいした力なんてないけれど。

 精一杯の決意とともに、アイラもまっすぐにエリーシャを見つめ返したのだった。


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