後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「何だか飲みたくなっちゃったのよね」
「早く帰った方がいいんじゃ……」
「だいじょぶ、だいじょぶ、いつものことだから」

 エリーシャは、アイラを引きずるようにして一軒の酒場に入っていった。

「ビール二杯! それからウィンナー盛り合わせに、フライドポテト!」

 混んでいる酒場の隅にエリーシャは席を取る。アイラはエリーシャの横にちょこんと腰を下ろして、注文した品が運ばれてくるのを待っていた。

「はい、乾杯!」

 二人の前にビールが運ばれてくると、エリーシャはジョッキをアイラと打ち合わせて中身を一気にあけた。

「おかわり! 今度は大きい方のジョッキでね!」
「なんだかなぁ」

 ジョッキを運んできた店主が、エリーシャの方を見て笑った。

「エリーシャ様と同じ名前なのに、ぜんぜん違うんだからなぁ」

 ビールにむせたアイラは妙な音を立てた。
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