後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 シャワーのついた立派な浴室だった。そこに用意されている石鹸も数種類の花の香料を混ぜた香りの高い贅沢なものだ。

 侍女たちのために用意されているタオルもふわふわとしたもので、売り飛ばされたとはいえ、家にいるよりはるかに豪華な生活を送れるのは間違いなさそうだ。

 とはいえ、あまりゆっくり入浴しているわけにもいかずに、アイラはお湯を出して石鹸を泡立てる。

 蛇口からは、適温の湯が流れ落ちてくる。エリーシャの寝室に戻った時には、エリーシャも入浴を終えたところだった。

 彼女は絹の贅沢な寝間着を着て、ベッドカバーをまくり上げたところだった。

「明日からは、剣の稽古を始めようね、アイラ」
「はい――エリーシャ様。おやすみなさいませ」

 部屋の明かりが落とされる。アイラは自分のベッドに潜り込むと目を閉じた。

† † †

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