後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 翌朝、アイラのもとに届けられたのは二本の短剣だった。
 
 それから、エリーシャが着ているのと同じような――ただし材質は一般的なもの――裾をくくったズボンとブラウスとベストの組み合わせ。

 朝食を終えると、エリーシャはアイラを連れて後宮騎士団の詰め所へと向かう。

「おはよう、ゴンゾルフ」
「おはようございます、エリーシャ様」

 ゴンゾルフとイヴェリン、それに何人かの騎士たちが詰め所前の広場で待っている。

「今日からアイラの訓練を頼みたいの。いいでしょ?」
「おまかせください、エリーシャ様――アイラ」

 ゴンゾルフは、騎士団のメンバーの一人――フェランだった――に手をあげた。彼はアイラが持っているのと同じように、短い剣を二本、持っている。

「とりあえず、今日はフェランに相手してもらってくれる?」

 あいかわらず、ゴンゾルフの口調は女性的なものだ。アイラはうなずくと、エリーシャに持たされた剣を手にフェランの方へ向かった。

「左手の短剣は、主に防御。右手が主に攻撃――右利きだよね?」
「ええ、右利きよ」

 ライナスの方じゃなくてよかった。
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