後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 アイラは、運び込まれた木箱の中身を確認する。エリーシャの命令で研究所に行った騎士たちは、中身を丁寧に扱ってくれたようだ。

「平民の娘に手を出した時に、できたとかできなかったとかいう話も聞いたけどね」

 エリーシャの口調はあけすけだ。アイラが想像していたのとはまるで違う皇女らしからぬ言動はどこからくるのだろう。

「それはともかく、お父様も子どもをたくさん作る前に亡くなったでしょ。わたしとセルヴィスだけだもの」

 エリーシャは一歳違いのセルヴィス王子とは、母親が違う。

 本来は皇帝になってからでないと後宮の住人を増やすことができないのだが、皇太子一人だけだったということもあって、皇太子宮に女性たちを置く区画をもうけたのだという。

「それだって、リリーア一人でしょ。だから、今は皇女一人、皇子一人。本来なら、皇女宮は何人もの皇女がいて、この区画を分け合ってるのにそれができていないってわけ」

 だからなのかとアイラは納得する。昨日通った隠し通路。その入口がある部屋は、長年の間使われていないようだった。

「ま、部屋が余っているというのはありがたいわ」

 悪びれない口調でエリーシャは言った。
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