後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 皇宮内のあちこちからかき集めてきたのだろう。種類のばらばらな書棚が壁にそなえつけられて、そこは急ごしらえの図書室のような雰囲気になっていた。

「とにかく、あなたの家から持ってきた本をここに全部並べてちょうだい。それから、夕食までは自由にしてていいから」
「――護衛は?」
「必要ないっしょ」

 エリーシャは肩をすくめる。

「それもそうですね。エリーシャ様の方がお強いですし」

 エリーシャの腕は、どこで磨いたものなのだろう。近衛騎士団の騎士たちを倒していく手際は鮮やかだった。

「というか、今日は後宮から出る予定ないしね――今のところは。午後からはダーレーン公用語の勉強。嫌になっちゃう」
「では、こちらはおまかせください」

 心底嫌そうな顔をして出て行くエリーシャをアイラは見送る。
 
 それから、壁の方に向き直ると、下働きの侍女たちにてきぱきと指示を出し始めた。
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