後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
後宮に売り飛ばされたようです
「君の父親は、ジェンセン・ヨークで間違いないね?」
「父が、何か?」
一瞬にしてアイラの頭の中をいやな想像が駆けめぐった。父は昔宮廷魔術師だったというが、今は見る影もない。
昼間から酒を飲んでふらふらしているか、旅に出たまま一月以上戻ってこないのもしょっちゅうだ。だからこそ、アイラがこうやってカフェで働いて生活を稼ぐ必要があるのだけれど。
「今、どこにいるか知っているか?」
アイラはふるふると首を横に振った。父は一週間ほど前、ふらりと旅に出たまま連絡などいっさいよこさない。それがいつものことだったし、気が済めば帰ってくるだろうとアイラもたいして心配していなかった。
「そうか、たいそう言いにくいことなんだがな。君の父上には借金がある――それも多額の」
「借金って誰にですか?」
「わたしの夫だ」
「夫……夫って! 騎士団長じゃないですか!」
アイラは悲鳴に近い声を上げる。
「そう、君のお父上とは古くからの友人でね。さて、そろそろ貸した金を取り戻したいと思っているのだが、どうにかならないかね?」
「……どのくらいですか? 借金って……」
「父が、何か?」
一瞬にしてアイラの頭の中をいやな想像が駆けめぐった。父は昔宮廷魔術師だったというが、今は見る影もない。
昼間から酒を飲んでふらふらしているか、旅に出たまま一月以上戻ってこないのもしょっちゅうだ。だからこそ、アイラがこうやってカフェで働いて生活を稼ぐ必要があるのだけれど。
「今、どこにいるか知っているか?」
アイラはふるふると首を横に振った。父は一週間ほど前、ふらりと旅に出たまま連絡などいっさいよこさない。それがいつものことだったし、気が済めば帰ってくるだろうとアイラもたいして心配していなかった。
「そうか、たいそう言いにくいことなんだがな。君の父上には借金がある――それも多額の」
「借金って誰にですか?」
「わたしの夫だ」
「夫……夫って! 騎士団長じゃないですか!」
アイラは悲鳴に近い声を上げる。
「そう、君のお父上とは古くからの友人でね。さて、そろそろ貸した金を取り戻したいと思っているのだが、どうにかならないかね?」
「……どのくらいですか? 借金って……」