後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 正確には、そこに生母の身分が加味されて結論が出されることになるが、エリーシャは正妃の娘だし、故オルーシャ妃は、タラゴナ帝国内でも高位の貴族の家系だった。

「だから、わたしが欲しいんですか? 意味わかんないです」

 エリーシャの弱みを握りたいのならば、アイラより長く仕えているファナやイリアの方がセルヴィスにとって有用な情報をいろいろ流せるのではないだろうか。

 いや、それを言えば毎晩のように後宮を抜け出て飲み歩いていること自体問題になりそうなのだけれど――それにしたって皇女を廃するほどのものではないはず。

 エリーシャは笑った。

「馬鹿ね、あなたが宮廷魔術師、ジェンセン・ヨークの娘だからよ」
「わたしが父の娘?」

 ますますわけがわからない。あんなしょぼくれたくそ親父の血を引いているからといって、セルヴィスがアイラを欲しがる意味などあるのだろうか。

「あら、あなた知らないの? ジェンセン・ヨークと言えば、タラゴナ帝国最高の魔術師と言われた男なのに」

 考えてもみなかったエリーシャの言葉に、アイラは首をぶんぶんと横に振ることしかできなかった。
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