後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「そうよ、あなたちょうどいい相手だったんだもん。わたし、護衛なんて必要ないのに護衛侍女をつけろって皆うるさいしね! ちょっと剣が使えて後宮に入ってくれる女の子なんてめったに見つからないもの!」

 後宮に入るというのは、いつ皇帝の手がついてもおかしくないということである。それがたとえ皇女宮に仕える侍女であったとしても、だ。

「おじい様ももう六十でしょ、おまけに後継者争いを最小限にするためにもう子どもは持たないって決めてるし。まあ、子どもが成人するまで生きていられるかどうかっていうのもなかなか難しい話なんだけど」

「はぁ……」

「六十過ぎたじーさんにどうこうされても、うまみがあるならともかく、何もないでしょ。将来の皇帝の外戚になれるわけでもないんだし――まあ、後宮にいる間は贅沢三昧だけど、貴族の娘ならたいがい金銭的には困ってないわよ」

 特有のあけすけな口調で、エリーシャは後宮の現状を描写する。

「まあ、そんなわけで、このところ後宮に上がりたがる娘が減っていてねー。ま、たいしたうま味もないからしょうがないんだけど。リリーアの方は親戚の娘を侍女として入れてるけど、こっちはそんなわけにもいかないでしょ」

 そんな理由で後宮が人手不足だと聞いて、アイラは驚いた。

 皇女の身の回りをするくらいどうってことないだろうに。とはいえ、アイラも最初話を聞いた時は皇帝の相手をさせられるのだと思い込んだのだから、大差ないのかもしれない。
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