後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 彼はアイラの手を取って、左手の中指にそれを滑り込ませた。

「こう命じればいい。『光の精霊よ』で、君の名前において命じるって続けて――『我に偽りの姿を与えよ!』で発動するはず」

 素直にアイラは命じられた呪文を繰り返した。一瞬、アイラの姿が光に包まれる。次の瞬間、鏡見たアイラは驚いた。

「……憧れの巨乳……!」

 限りなく真っ平らな胸元がエリーシャのように豊かに盛り上がっている。侍女のお仕着せがきついくらいだ。

「そこで喜ぶのか……」

 ライナスは額に手をあてた。

 髪の色も、目の色もエリーシャと同じように変化していた。不細工メイクを落とせば、かなりそっくりに見えるはずだ。

 元の姿に戻る方法も教わってアイラは部屋に戻った。アイラが命じるか、あるいは丸一日たつかまでは、エリーシャそっくりの姿を保つのだそうだ。

 その夜、エリーシャに懇願されて目の前で姿を変化させられたあげく、胸を鷲掴みにされたのは完全な余談である。
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