愛しのケダモノ王子
そう言って羽山は、ポケットからネックレスを差し出した。
昨日私が付けていたもので、月をモチーフにしたピンクゴールドのネックレス。
大学祝いに自分で買ったお気に入りのものだった。
「可愛いな、これ。あきららしくて」
「………」
私は羽山の言葉を無視してネックレスを受け取ると、カバンの内ポケットにしまった。
「…わざわざありがと。じゃ」
「えっ、あきら…」
その場を立ち去ろうとすると、羽山が慌てて呼び止めた。
「…何?まだ何か用?私、これから予定あるんだけど」
「あっ、私、用事思い出した!!
ごめんあきら、スタバまた今度ね!
タモツ君、あきらのことヨロシク!」
「ちょ、亜由子?!」
走り去る亜由子の背中を、呆然と見送った。
私は羽山と2人、ポツンとその場に残される。
「…スタバ行く予定だったの?
なんなら今から俺と行く?」
「結構です。じゃ、さよなら」
「あきら、待ってよ!」
羽山が、私の腕をぐいと引いた。