愛しのケダモノ王子
私はTシャツ一枚という姿だった。
見慣れぬ男物のTシャツだ。
バッと胸に手をやると、ブラを着けていない。
振り返ると、床に私の服とブラが脱ぎ捨てられていた。
徐々に、血の気が引いてゆく。
「…どしたの?
まさか覚えてない?
昨日あきらすげー激しかったんだよ。
俺、びっくりして…」
「…うそだ」
「え?」
「うそだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
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…12時間前。
「じゃ、次私ー!亜由子、二十歳です♪
趣味はお菓子作りでーす♪よろしくー♪」
「アユコちゃ〜ん!
今度俺に何か作って!」
「おい、ずりーぞお前!」
「ほら、次はあきらの番!
あきら、どしたの??」
「…………」
“あきらも早く彼氏のひとりくらい作りなさい!”
そう言われ無理やり連れてこられた合コン。
「あきらちゃんって言うの?
見た目綺麗系だけど名前はかっこ良いねー」
「ごめんねー?あきら、こういうのあんま慣れてなくて。
ねぇ、どうしたの?あきらってば…」
亜由子の声など入って来なかった。
「久しぶり、あきら」
向かいに座った男が、そう言ってふにゃっとした笑顔を向けた。
…あの頃と何も変わらない笑顔。