愛しのケダモノ王子
…二度と、会いたくなかった男。
会うことなんてないと思っていた男。
…その男が、今私の目の前で笑っている。
「元気にしてた?あきら」
変わらない声で、私の名前を呼んだ。
ーーーーーー…
(いたたた…)
ガンガン響くような痛みが頭の中で鳴り響く。
私は思わず頭を抑えた。
席を取ると、さっきコンビニで買ってきたドリンク剤を取り出す。
一気に飲み干すと、大きく一息ついた。
「ちょっと、ハタチの女が堂々とキャベ○ン飲まないでよー。
しかも大学で!!」
「…亜由子」
亜由子が呆れたように言うと、私の隣に座る。
「てゆーか二日酔い?
そんなお酒強くないのに、昨日やたら飲んでたもんね、あきら」
「…………」
私は頭痛薬を水で流し込んだ。
「……で??」
亜由子がずいと身を寄せて来る。
「あの後タモツ君とはどうなったの?」
そう小声で聞いてきた亜由子の瞳が、期待を込めてキラキラと輝いて見えた。
「…そんな男知らん」
私は務めて冷静に、吐き捨てるように言った。