生まれ変わる光
生まれ変わる光
ある夏の夜。
僕は自宅の縁側に座り、夏の夜を楽しんでいた。
昼間に比べれば、夜はだいぶ涼しく感じられる。
だけど今日はやけに蒸し暑い空気が、密着するように身体を包み込んでいた。
――それが、どうしようもなく心地悪い。
夏の夜は意外と好きな方だ。昼間の夏は嫌いだけれど。
昼なんかより、夜の方が断然良い。
だってこうやって縁側に出れば、無料で虫たちのコンサートを好きなだけ鑑賞出来る。
今日もさっそく、スズムシたちがリーン、リーンと鳴き始めていた。
それに夏の夜といえば、何と言っても星空が綺麗だ。
僕が住んでいるのは、周りが田んぼと山しかない典型的な田舎町。
隣の家との間には、膨大な広さの田んぼが広がっている。
だから家に居ると、人の気配を全く感じられない。
まるでこの広い世界に、たった一人取り残されたみたいだ。
澄んだ空気の上に広がる、真っ黒なキャンバス。
そこに散りばめられた無数の星屑たちを、静かに見上げていた。
< 1 / 30 >