生まれ変わる光
「あっ、そうだ」
彼女はふと何かを思い出したようにそう短く言うと、縁側に下ろしていた腰を持ち上げた。
一瞬、僕の言ったことを聞いてくれるのかと思った。
期待と安堵で頬が緩む。
だけどそんな僕を尻目に歩き出した彼女が向かった場所は、寝室でも居間でもない。
一番予期していなかった台所に、彼女の足取りは向かっていく。
おまけに彼女が一目散に目指したものは、あろうことか冷蔵庫であった。
何か飲み物でも飲むのだろうか?
そう思いながら見ていると、彼女は冷蔵庫の大きなドアを開けるのではなく、上部の小さな冷凍庫のドアを開いた。
そして冷凍庫から何かを取り出すと、笑顔でこっちに戻ってくる。
途中でベリベリッとビニールの何かを剥がして、無造作にテーブルに置いていた。
「はい、今日は暑いから」
彼女が僕の目の前に差し出したのは、白い冷気を放つアイスキャンディーだった。
オレンジの、爽やかな色。
きっと、見た目通りの味なのだろう。