青空の下へーその手に願いを込めてー
窓からの光が花瓶を通り抜け、床にきらきらとした模様を描く。

「…きれいだね」

ちよちゃんはそうぽつりとつぶやく。

そう言う割りには、声に影がある。

「……ずっと前、私のおうちのお庭に、チューリップを植えたの」

唐突に家の話が出て、私と先生は顔を見合わせた。

ちよちゃんはベッドに座ったまま、うつむきながらしゃべる。

「……もう、あのチューリップ見れないのかな……パパやママは、私のこと、嫌いになっちゃったのかな……?」

「なんで、そんな………」

私はその先を言おうとして、止まった。
それは、
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