本気で大好きでした。


さっきよりも強く

力いっぱい手を握った。

お母さんが「理緒、いたいよ」って目を覚ましてくれるんじゃないかって

手を握り返してくれるんじゃないかって



なのに───────



“ピーー”



「横田めぐみさん 17時50分 ご臨終です」



涙が止まらなくなった。

だんだん冷たくなっていくお母さんの手が怖かった。


いつの間にかあたしは病室から飛び出していた。

彼方がいるんじゃないかと

彼方と約束した朝の長いすに向かう。


涙で視界がかすんでいる


「彼方っ…… どこにいるんだよぉ…」


彼方はいなかった。

あたしはイスに座り、涙を流した。


彼方が来るときには、笑顔でいたい


なのに……


「理緒っ!?理緒!大丈夫かっ!?」


………彼方だ


「かなたっ……」


彼方は、あたしをそっと抱きしめた

彼方の温もりに包まれる。


すごく安心する温もりだった


「落ち着くまで泣いていいから」


そういい、さっきよりも強い力であたしを抱きしめた。



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