ティーチ?
「し、失礼します」



……ああ、やっぱり、あの篠岡さんだった。

彼女は室内のほぼ中央あたりまで来ると、所在なさげに立ち止まる。

それに気づいて、俺は机の横にあったパイプ椅子をすすめた。



「はい、これに座って」

「あ、ありがとうございます」



そう言って、ちょこんと椅子に座る。

心臓が、馬鹿みたいに血液を送り出していて。俺はそれを表に出さないよう、努めていつもと変わらない仕草で、事務椅子ごと彼女に向き直った。


今目の前にいる、篠岡 沙知さん。

彼女は、俺が世界史の授業を受け持つクラスの生徒。

そして──俺が今1番、気になっている女の子。
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