ティーチ?
「……ねぇ、綺里さん」

「なんでしょう、沙知さん」



昼休み。教室の机につっぷしながら神妙な声音で話しかけた私に、気だるげな様子でケータイを片手でいじっていた綺里ちゃんが、同じく神妙な声で返事をした。

視線はケータイの画面から離れないままだけど、こちらの話は聞いているようなので、私は続ける。



「私、すきな人ができたかもしれません」

「……マジで?」



ようやく顔を上げた綺里ちゃんは、まじまじと私を見つめながら左手に持っていたバナナオレを机の上に置いた。

その視線を受けながら、こくりと、私はうなずく。



「マジ、……だと思う」

「……相手は?」



まるで何か重要な秘密を聞きだしているかのような様子で、ぐっと身体を乗り出した綺里ちゃん。

それに私が「元サッカー部の鎌田先輩」と低い声で答えると、彼女は「はあ?!」と思いっきりその美人な顔を歪めた。
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