ティーチ?
「教えてほしい、」
「………」



すやすやすや。

悲しいかな、もうすでに見慣れてしまった、小さな寝息をたてる後頭部を見下ろして。

俺はたまらず、深々とため息を吐いた。



「どうして篠岡さんは、よく僕の授業で寝てるのかな……」

「仕方ないよみゃーくん。だって篠岡ちゃんの席、日当たりよくてポカポカだもん」

「……そっか」



俺の呟きに律儀に返事をしてくれた斜め前の席の生徒にうなずき、教壇に戻ろうと踵を返す。

まあね、たしかに今日は天気もいいし、そもそも篠岡さんの“窓際最後尾”という座席は、学生にとってとても魅力的な場所ではあるけど。



「……じゃあ誰か、篠岡さんが起きたら『篠岡さんはマイナス5点です』って僕が言ってたって伝えておいて」

「うーわーみゃーくん鬼!」

「はいはい。ホラ、授業再開するよー」



この話はもう終わりとばかりに、板書するため黒板に向き直る。

よっぽど悪質な授業態度以外、減点まではしないと決めているが……他の生徒たちの手前、口先だけの篠岡さんの減点総数は、もうすぐ3ケタの大台だ。……さすがにこれはマズい。
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