ティーチ?
だけど、俺には篠岡さんの居眠りをきつく咎められない理由がある。

教師である自分が、初めて彼女のことが気になったのも──その、授業中の居眠りが、きっかけだからだ。


このクラスの生徒たちが、2年生になったばかりの頃。

まだ数回めの俺の授業中。当時は教室のほぼ中央の席だった彼女が、あまりにも堂々と寝てるもんだから……さすがに起こそうかと、近づいて。



『篠岡さ──』



だけど、すやすや眠るその気持ちよさそうな寝顔が、あまりにも無防備で、かわいかったから。



『……はい、授業再開します』



俺は回れ右をして、教壇へと戻ったのだ。



『えぇえみゃーくん、篠岡さん起こさないのっ?!』

『篠岡さんだっていろいろあって疲れてるのかもしれないしね。そっとしておいてあげましょう』



生徒に対してときめいてしまったという心の中の動揺を悟られないように、俺は至って平常心を装って黒板へチョークを走らせる。

俺の言動のどこかがおもしろかったらしい若者たちから、笑い声が上がった。



『みゃーくんウケるー、明らかにただの居眠りなのに超やさしー』

『ずるーいヒイキだー』

『コラコラ、勝手なこと言わない。篠岡さんはマイナス20点です』

『ちょ、みゃーくん唐突に鬼畜すぎ』

『それが嫌だったら、みんなは居眠りしないことー』

『は~い』
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