ティーチ?
「ほんとに、ね。サチちゃんのことは、嫌いじゃないんだけどなぁ」

「……ッ、」



キュ、キュ、とリノリウムの床を歩く先輩の足音が、徐々に遠のいていく。

足音が完全に聞こえなくなってしばらくしてから、私はうつむけた顔を上げゆっくりと立ち上がった。



「………」



きっとひどい顔をしているであろう私を、すれ違った知らない生徒が不思議そうに見つめてから視線をそらす。

なんだか心の中がぐちゃぐちゃで、何も考えられないのに、足は自然と、ある場所に向かっていて。

熱があるみたいに、頭がぼーっとする。



《がんばれ、篠岡さん》



──ああ、早く。

早く、あの穏やかな声に会いたい。
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