ティーチ?
『なんかあった?』、という綺里ちゃんの問いかけに、私はなんて答えればよかったんだろう。


鎌田先輩が、実は結構軟派な人だってわかったこと?

その鎌田先輩に、『こういう関係になる?』と誘われたこと?

……それとも――……。



《――ごめん、篠岡さん》



社会科準備室での、宮内先生とのこと?


また思考の渦に飲まれそうになったそのとき、休み時間終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。

席を立っていたクラスメイトたちが各々着席していく中、程なくして教室の前方のドアが開いた。

ドキリと、一際大きく鼓動が鳴る。



「……それじゃあ学級委員、号令かけて」



低いけどよく通るその声を合図に、学級委員の男の子がきりーつ、礼、着席と間延びした調子で言う。

その言葉通りの動作をしながらも、私はうつむいたまま、顔を上げられずにいた。



《今すぐこの部屋から、出て行ってくれるかな》

《ごめん、本当にごめん。今の俺本当どうかしてるから、だから早く、出てって》



ついさっき聞いたばかりみたいに、昨日の宮内先生の言葉が、頭の中にこだまする。

それと同時に――あのとき重なった、唇の熱さも。
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