ティーチ?
ねぇ、先生。私たちはもう、今までみたいな関係でいられないの?

放課後の社会科準備室で、他愛もない会話をしながら、お茶したり。そういうことも、できなくなるの?

ねぇ、先生――。



「……えっ、ちょっ、沙知ちゃん?!」



となりの席の子が、驚いた様子で私の名前を呼ぶ声がする。

どうしたんだろう、私よっぽど、変な顔でもしてるのかな。

なぁに、と、彼女に返事をしようとして――そこでようやく私は、自分の頬をあたたかいものが流れていることに気付く。



「あ……」



ああ、そっか。私、泣いてたんだ。

頬に触れて、その透明なしずくを確認して。

理解したと同時に、自分でも堪えきれないくらい、ボロボロと涙が溢れ出てきた。



「……うぅ……」



ああ、ダメだ、止まってくれない。

まわりのみんなも私が泣いていることに気付いて、口々に気遣わしげな声を掛けてきてくれる。

私はそれに、返事をすることもできなくて。

ただ、教室の前の方――教壇の上にいる、宮内先生の反応だけが気になった。



「篠岡さ――、」



先生にだけは、見られたくない。

そう考えた私は、彼が私の名前を呼ぶその前に、椅子から立ち上がっていた。
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