ティーチ?
おまけ ~先生と生徒Aの場合~
いつもの、社会科準備室。
先日行ったテストの採点中、不意にドアをノックする音が聞こえて、俺は赤ペンを走らせる手を休めずに「どーぞー」と声を掛けた。
そしてドアノブがまわるのと同時に、後ろを振り向く、と。
「よっ、“みゃーくん”」
にこやかに手を振る予想外の人物としっかり目が合って、俺は自然と微妙な表情をしてしまう。
その人物がドアを閉めたのを確認してから、隠しもせずに、深々とため息をついた。
「ここでは、猫被んなくてもいいんじゃない? ……“雛瀬さん”」
わざとらしく名字で呼ぶと、数メートル先の彼女──2年生の雛瀬 綺里は、「失礼ねー」なんて呟きながら、勝手に手近な椅子を引き寄せた。
そしてにっこり、今度は含みのある笑みを浮かべる。
「せっかく、ホタカにぃの恋に協力してあげたっていうのに……ひどい扱いだなぁ」
その、彼女のせりふに。
俺はまた、深ーく息を吐く。
「……やっぱりアレは、わざとだったか……」
「んふふ。グッジョブだったでしょ?」
「いやまあ、なんとなくきーちゃんには、気付かれてるかなぁって思ってたけど」
そうして俺は、母方のいとこである彼女に紅茶を淹れるべく、椅子から立ち上がった。
あつあつのマグカップを差し出すと、「あら、ホタカにぃにしては気ーきくのね」なんて、手厳しい言葉が降ってくる。……ほんと昔から変わんないな、この子……。
「……篠岡さんから、聞いたよ。鎌田のことで悩んでた彼女をここに来るように勧めたのは、きーちゃんだって」
「ん。てかホタカにぃ、その『きーちゃん』って呼ぶの、間違っても他の生徒の前では絶対やんないでね。キモチワルイから」
「……そうですか……」
がっくり、彼女の毒舌にうなだれて。
だけど俺はまた、めげずに口を開いた。
先日行ったテストの採点中、不意にドアをノックする音が聞こえて、俺は赤ペンを走らせる手を休めずに「どーぞー」と声を掛けた。
そしてドアノブがまわるのと同時に、後ろを振り向く、と。
「よっ、“みゃーくん”」
にこやかに手を振る予想外の人物としっかり目が合って、俺は自然と微妙な表情をしてしまう。
その人物がドアを閉めたのを確認してから、隠しもせずに、深々とため息をついた。
「ここでは、猫被んなくてもいいんじゃない? ……“雛瀬さん”」
わざとらしく名字で呼ぶと、数メートル先の彼女──2年生の雛瀬 綺里は、「失礼ねー」なんて呟きながら、勝手に手近な椅子を引き寄せた。
そしてにっこり、今度は含みのある笑みを浮かべる。
「せっかく、ホタカにぃの恋に協力してあげたっていうのに……ひどい扱いだなぁ」
その、彼女のせりふに。
俺はまた、深ーく息を吐く。
「……やっぱりアレは、わざとだったか……」
「んふふ。グッジョブだったでしょ?」
「いやまあ、なんとなくきーちゃんには、気付かれてるかなぁって思ってたけど」
そうして俺は、母方のいとこである彼女に紅茶を淹れるべく、椅子から立ち上がった。
あつあつのマグカップを差し出すと、「あら、ホタカにぃにしては気ーきくのね」なんて、手厳しい言葉が降ってくる。……ほんと昔から変わんないな、この子……。
「……篠岡さんから、聞いたよ。鎌田のことで悩んでた彼女をここに来るように勧めたのは、きーちゃんだって」
「ん。てかホタカにぃ、その『きーちゃん』って呼ぶの、間違っても他の生徒の前では絶対やんないでね。キモチワルイから」
「……そうですか……」
がっくり、彼女の毒舌にうなだれて。
だけど俺はまた、めげずに口を開いた。