色褪せた天使【完】
まだ、朝日も眠っている時間。
私は玄関に立った。
「ん…おと、は?」
ボサボサの頭で、目を擦る愛輝。
寝ぼけたアナタだって、
こんなにも愛しく思う。
「愛輝…どしたの?」
「トイレー…音葉は?」
「…嫌な夢、見ちゃって。
外の風に当たりたくなったの」
また、私は彼に嘘を吐く。
「寒いから、すぐ帰りなよ?」
「うん。ありがとー」
そう言って、私は玄関を出た。
(ごめん、もう帰らないよ。)
机に置いた手紙には、
いつ気付くだろう。
二言だけの、短い手紙。
冬の夜の風は、
肌にツンと突き刺さって、
冷たさで涙が出そうになった。
ありがとう。
さようなら、愛輝。
end.