色褪せた天使【完】
「大丈夫?怪我は!?」
「あ、大丈夫…
何度も…ありがとう」
彼の、
ぶっきらぼうに
つり上がっていた眉が、
少し下がって、
表情が優しくなった気がした。
「立てる?」
「大丈夫。
ゆっくりなら…歩けるから」
(向こうの世界では
飛んでばっかり
だったからかなぁ…
こっちのほうが
重力も重い気がする。)
「行ってしまうの?」
「迷惑も、かけられないし…
お母…
(さんは、待ってないな…)
家族も、居るから…」
半分ホントで、半分嘘。
なんだか少し後ろめたくて、
私は俯いた。
すると彼が、
ためらいがちに尋ねた。
「ビルから、
飛び降りたんじゃ…
なかったの?」