色褪せた羽【完】
ガチャ、バタンッ
俺は急いで家を出て、
彼女を追いかけた。
彼女がどこに居るかなんて
わからなかったけれど、
ただただ、必死で走った。
「はぁ…はぁ…っ」
あんな傷付いた羽じゃ、
飛べない。
きっと、
そんなに遠くには行ってない。
「行かないでくれ…音葉…!」
気が付いたら俺は、
5年前、
音葉が俺の代わりに
車に轢かれた、
あの交差点に来ていた。
横断歩道の手前、
佇む一人の女の子がいた。
「音葉―――っ!!」
俺は叫んだ。
彼女に間違いない。
「よし、き…?」
振り返った彼女の目には、
涙が溢れていた。