色褪せた羽【完】
「音葉、好きだ」
俺は彼女の肩を掴んだ。
そして、
まっすぐに
彼女の目をみつめた。
今、
この瞬間の彼女を、
一つも見落とさないように。
「…私もだよ」
そして僕は、
彼女の唇に
そっとキスをした――。
「ごめんね、愛輝。
…愛してたよ」
その時、
俺は
目を開けていられないほどの
突風に襲われた。
目を開けると
そこに彼女の姿はなく、
ひとひらの羽だけが
ふわりと頬をかすめる。
さようなら―――。
end.