君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
「おっ、晃ちゃん。
どうして、さっきのSHADEのRyoじゃん。
しかもこれ、今のツアーのバスタオル。
どの会場でも真っ先に売り切れるレア品だよ」
そうやって話してくれる凌雅さん。
「この間、紀天と一緒に楽屋であったの。
アイツのドラムの師匠と知り合いらしくて。
後、うちの宝珠さまとも」
「なるほどね。
晃ちゃんのデューティ、顔広いからね。
そんな晃ちゃんに紀天の親友としての俺からのアドバイス。
紀天、今大変な時期なんだ。
だから待っててやってよ。
落ち着いたら、アイツが自分で打ち明けると思うから。
今回、来れなかったのもそれが原因なんだ。
だけど俺は、今その理由を晃ちゃんに言うことは出来ない。
だから待っててやってよ。
アイツが大切にしてるのは、晃ちゃんだけだから」
そう告げた凌雅君の言葉すら、
今は何処か余所余所しく心に残る。
その日は智海の自宅に泊まって翌朝、帰宅。
帰宅して紀天の家のベルを鳴らすものの、
家族皆で出かけているのか、おじさんの車もそこにはなかった。
擦れ違いのまま迎えた、水泳部の合宿。
夏の強化合宿。
そしてその合宿は、特待生として入学している私には
欠席することは許されない一大行事。
気分が乗らない中、悧羅校まで向かって
そこからバスで移動。
いつもは乗り物酔いも気にしないのに、
今回は動き始めてすぐに乗り物によって、
何度も鬼太郎袋のお世話になる。
もう、最低だよ。
ようやく到着した合宿先。
各選手専用の練習メニューが
二時間単位でみっちりと張り出される。