君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
プールサイドには、
選手コールが告げられていた。
各出場校の応援席。
校旗や横断幕、手作りの選手の名前が書きこまれた
何かを持ちながら、一斉にプールサイドに声援を送る観客たち。
ゆっくりと決められた位置につきながら、
観客席の方に視線を向けた。
「晃穂~、肩の力抜いてけぇー。
ガチガチじゃねぇかぁー。
リラックス、リラックスー。
オレがついてるぞー」
どうしてなんだろう。
こんなにも大勢の人が居て、いろんな声が入り乱れてるのに、
遠く離れすぎてるのにアイツの声は、はっきりと聞こえて、
アイツの姿もこの目は捉えていく。
「晃穂~、アンタの勝利の神様はここに居るから。
思い切っていきなっ」
智海の声もしっかりと耳に届く。
「晃穂先輩~」
結愛が私の名前を呼ぶ。
「晃穂、全てを出し切りなさい」
そうやって言い放つのは、デューティである宝珠さま。
紀天の声に、皆の声に精神的に安堵した私は、
深呼吸を一つ。
体の無駄な力がゆっくりと抜けていくのを感じていた。
コールと共に始まった試合。
飛び込んだ瞬間から、水抵抗も特に感じることすらなく、
スイスイと思うように体を動いていく。
泳いでいる途中の苦しくなるような疲労感も
そこにはなくて思いっきり自由に、そしてリラックスして泳ぎきった。
リラックスして楽しんで泳いでいたのに順位は1位。
大歓声のまま、プールをあがって紀天たちの方に手を振る。
そしてその時、弾き出したタイムは今までの自己ベストの更新と共に、
大会記録まで塗り替える形になった。
全ての制覇は出来なかったけど、
それでも私的には、一気に心が軽くなった試合結果。
その帰り道、私はアイツと一緒に久しぶりの時間を過ごせた。
そこで伝えられたアイツの尊夜君に関する秘密。