君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
瑠璃垣伊吹が廣瀬尊夜であること。
そして、その子が今の紀天のジュニアをしていること。
そこに至るまでの、咲空良おばさんたちが抱えていた紀天の家庭問題。
そんな全てを洗いざらい打ち明けてくれたアイツは、
『話せなくてごめん』っと小さく呟いた。
そしてそれは、
あの約束を破った謝罪へと繋がっていく。
「晃穂、悪い……。
でも、お前も携帯ちゃんと忘れずに持ってけよ」
「うるさい。
携帯なんかなくても駅には伝言板もあるじゃん」
「一部の駅だけな。
晃穂、お前の方がずっと使ってるだろ。
あの駅、伝言板撤去されてんだよ。
携帯が普及して、使うやつがいなくなったからって」
「知らないわよ。
そんなの」
「だから謝ってんじゃねぇか」
「そんなの謝ってる態度じゃないじゃない」
「悪かったって。
お詫びに、ケーキの食べ放題バイキング
付き合うからさ」
「クリスタルホテルの
最上階のヤツね」
その後、私は合宿最後までやり遂げて
足取り軽く、家路へとついた。
合宿が終わって帰宅した翌日、
昼前に自宅のチャイムが鳴る。
暫くすると階段を上がってくる二つの足音。
「晃穂、何時まで寝てるの。
紀天君、来てるわよ」
「おばさん、有難うございます。
晃穂は悪くないですから。
晃穂、まだ寝てたか?」
「起きてるわよ。
少し読書してただけ」
「入っていいか?」
「いいわよ」
そう言うと襖が開く音がして、
アイツが私の部屋に入ってきた。
女の子らしい可愛さの全くない部屋。
「ったく、相変わらずなんだな。
晃穂の部屋」
「悪かったわね」
「いやっ、悪かねぇよ。
この方がオレも落ち着くから」
落ち着くから……。