君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
18.真実から始まる新生活 ~高校時代~ -紀天-
夏休み。
アイツとのクリスタルホテルでデートを満喫した一週間後、
俺は昂燿校へと戻った。
二学期が始まり、アイツと会えない時間が続いたが
一日に一通、アイツからも写真付きのメールは入って来る。
それを受けて、俺も確実にメールを返すようになっていた。
俺と伊吹の部屋入り口前にある、共同スペースのソファーに寝そべりながら
晃穂にメールを送信する俺に、アイツは飲み物を手にしながら近づいてくる。
「晃穂先輩ですか?」
「そうだよ。悪いかよ」
「別にオレは何も言ってませんよ。
先、お風呂頂いてきます。
いいですよね、紀天」
「あぁ、行って来い行って来い」
クソ生意気なアイツは相変わらずだけど、
前よりは心が通じるようになった気がする。
そんなアイツの後ろ姿をカシャリと写メって
アイツへのメールに返信した。
瑠璃垣志穏こと、瑠璃垣伊吹が廣瀬尊夜と言う俺の弟だと知ってから、
俺はアイツの兄である自分と向き合い続ける。
瑠璃垣伊吹。
瑠璃垣財閥の後継者として世間から認識されているアイツの傍に、
相応しい俺自身でありたい。
その為の声の使い方を学習し始める。
*
晃穂へ
元気してるか?
俺らの弟は相変わらず、可愛くねぇぞ。
アイツは今から風呂だとよ。
起きてたら少し電話しないか?
紀天
*
暫くするとアイツからすぐに着信が入る。
わざと、一度切って再度俺から電話を掛けなおした。