君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
3.アイツと私 - 晃穂 -
AnsyalのLIVEを見届けた後、
ファンクラブイベント限定の握手会&撮影会の準備で慌ただしくなる会場を、
一人抜け出してゴミ拾いの準備を始める。
握手会&撮影会に参加する権利が得られなかったファンたちが、
雪崩のようにライヴハウスから出て想い想いの時間を過ごす会場周辺。
友達を待つ者。
外で煙草を吸って一服してる者。
駅へと続く道を、余韻に浸りながら歩いていく者。
そんなファンたちの合間をぬって、
鞄の中に忍ばせてあった透明のナイロン袋を取り出して、
気が付いたゴミを拾いながら、待ち合わせ場所へと向かった。
待ち合わせ場所につくころには、すでにペットボトルや、空き缶などが
半分くらい袋の中を占拠していた。
チラチラと私の方を見ながらも、何事もなかったかのように通り過ぎていくファンたちも居れば、
自分の手持ちのゴミを「捨てさせて貰えますか?」と近づいてきて声をかけて捨てていく子たちもいる。
待ち合わせ場所から、LIVEハウスの方へと視線を向けながら腕時計を見つめる。
21時半を回る頃。
LIVEが終わったのが、
21時だったからもう少しでイベントも終わるかな。
他の子たちが合流してくれる前に、もう少しゴミを集めておかないと。
再び、周辺のゴミ拾いに歩き出したとき、
LIVEハウスから、コスプレ集団が姿を見せて私の方へと近づいてくる。
「紀穂さん、いつもすいません。
遅くなりました」
「貴姫さん、こちらこそいつも大勢で手伝ってくださって本当に嬉しいです」
「さぁ、皆。
とっととゴミ拾って打ち上げに行こう」
貴姫さんはそう言うと、
それぞれが自分で用意して持って来ていたゴミ袋を鞄から取り出して、
順番に周辺のゴミ拾いを始めていく。
そんな最中、メンバーがLIVEハウスから出て来たのかファンたちの一際大きな歓声が耳に届く。
ゴミ拾いを続けながら、そっと視線を向けたその先、
アイツの横顔を見つけた。