君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
21.アイツからの連絡 -晃穂-
AnsyalのツアーファイナルLIVEの翌日。
寝起きすぐに残りの仕事を自宅で済ませて、
10時頃のミーティングのタイミングで珍しく会社に出社。
そこで納品と次の仕事の打ち合わせをやって会議室を出た時、
携帯電話のイルミネーションが点滅しているのに気が付いた。
「お疲れ様です」
「絹谷さんお疲れ様。次も頼むよ」
責任者である、統括部長に見送られながら、
鞄の中で点滅する携帯電話に意識は向かう。
「それでは、今日はお先に失礼します」
お辞儀をした後、エントランスの方へと足早に移動しながら
鞄の中に手を入れて携帯電話を手に掴む。
ゆっくりと開くと、着信とメールのマークが液晶に表示される。
手慣れた手つきで指先で操作すると、
待ち続けたアイツの名前が表示された。
廣瀬紀天。
*
晃穂、俺、今日と明日はオフになった。
逢えそうか?
*
もう、バカっ!!
アンタは何時も突然すぎるんだから。
メールの内容を読みながら、送信された時間を追いかける。
10時10分。
間が悪っ。
どうして、ミーティングが始まった直後に電話してくるかなー。
そんなことを思いながら、メール画面を消して着信履歴を確認する。
こっちは10時8分かぁ。
電話してメールしたんだなーっと理解して、
そのままリダイヤル。
もうアイツの最初の電話から2時間が過ぎてる。
その間に、忙しいアイツはもう仕事に奔走してるかなー。
ちょっぴり罪悪感にも似た気持ちで、
呼び出しコールを待つと、電話の向こうで「もしもし」とアイツの声が聞こえた。
その声に高鳴る私の鼓動。
「紀天、遅くなってごめん。
朝から、会社に行ってたんだ。
けどもう終わったから、何処行けばいい?」
「俺、今は実家なんだ。
なんかお前のこと考えてたら、気が付いたら実家に帰ってた」
「じゃあ、私も実家に行くね。
その後、何処かにいこう?」
そう言って簡単に電話を済ませると、
私は最寄り駅まで全速力で駆け抜ける。