君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
久しぶりにあったデート。
だけど私たちのデートは、いつもこんな感じ。
住み慣れた地元の、桔梗が丘の商店街で
地元ならではのお店に平気で入って、ご飯を楽しむ。
フランス料理とか、イタリア料理とか、
ホテルの一流店とかでの食事なんて縁遠い。
だけど……そんなところで過ごす時間が、
私には凄く楽しみだった。
気取らない、ありのままのアイツが見れるから。
どれだけ忙しくて、人気者で、
ステージ上ではめちゃくちゃ輝いて遠い存在に感じるアイツも
この場所でだけは私に一番身近な存在だって感じることが出来るから。
向かい側の席に座って、軽く首をまわして筋肉を解してるアイツ。
そんなアイツを見ながら、私も同じように真似てみる。
「んっ?なんだ?
晃穂、肩凝ってんのかよ」
そんなことを言いながら鞄からタオルを手に持って、椅子から立ち上がると
私の後ろとなりの席に問答無用で座る。
「ほらっ、向こうに体向けろよ。
咲空良さん仕込みだから、気持ちいいぞ」
そんなことを言いながら、アイツは私の肩に躊躇いもなく触れる。
アイツの指先がテンポよく、私肩の筋肉を揉み解していく。
「パソコンで眼精疲労でも起こしてんのか?
パンパンで肩、凝りすぎてんだろ。
頭痛とかしなかったかよ?」
そんなことを言いながら、アタシの肩に触れ続けるアイツ。
ここ数日の頭痛が、眼精疲労から来てたなんて考えもしなかった。
だけど確かに頭は痛くて、市販薬の鎮痛剤は服用してた。
「よしっ、とりあえず軽くだけは解れた」
終わりを告げるように、両肩をポンと掌で叩くと
「お待たせ」っと、厳さんが再び両手に定食を手にして
テーブルへと近づいてきた。
「おぉおぉ、なんだなんだ。
紀天くん、晃穂ちゃんにまだ振り向いて貰えないのか?
とっくに結婚しててもいいだろうに?
しずちゃんが天国でやきもきしてないか?」
「厳さんっ!!」
慌てて厳さんを私から引き離すように、焦る紀天。