君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】
1.裏方のアイツ -紀天-
Ansyalとして三枚目のフルアルバムの地下作業を終えた
直後の貴重な一週間のオフ。
瑠璃垣の財閥の経営と共に、Ansyal、priere de l'ange(プリエールデランジュ)と
三足の草鞋を履く弟、尊夜。
そんな尊夜をサポートしながら、今も生活を続ける俺自身。
大学を卒業して、そのまま俺は尊夜をサポートすべく、
瑠璃垣コーポレートに名前を連ねた。
瑠璃垣伊吹【るりがきいぶき】付の補佐の一人として。
幸いにも、俺の親父にアイツの父さん。
そして最強の味方である、咲空良養母さん、アイツのばあさん。
そんなメンバーに支えられる俺と尊夜は、
好きなことをやりながら、過ごさせて貰ってる。
そんな瑠璃垣側の仕事も一段落して、
尊夜から与えられた、二日間の休み。
貴重な休みをいつものように、晃穂を呼び出して
お決まりのお店へと顔を出し、アイツの家に泊まりこんだ。
翌朝、ベッドから這い出すと、
先に目覚めたアイツが作る朝ご飯が、重さんのパンとテーブルに並ぶ。
「いただきます」
っと二人、声をそろえて、アイツは最初に美味しそうに重さんのパンを口に頬張る。
俺の前で美味しそうに重さんのパンを食べる晃穂。
そんなアイツを真っ直ぐに見つめる俺の視線。
*
美味しそうに食べるよなー。
*
この世の至福を得たように、
目を細めながら嬉しそうに、重さんのパンをかぶっと頬張る
アイツの、そんな些細な仕草にも心奪われる俺。
「えっ?何?紀天?
何かついてる?マ、マヨネーズ?」
っと視線に気が付いた途端に慌てだすアイツ。
右手の指先が口元を拭うものの、
マヨネーズなんてついてるはずもない。
「えっ?ついてないじゃん。
紀天のバカ」
「バカってなんだよ。
晃穂、それは八つ当たりだろ。
俺は何も言ってねぇじゃん」