君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】

1.裏方のアイツ -紀天-




Ansyalとして三枚目のフルアルバムの地下作業を終えた
直後の貴重な一週間のオフ。


瑠璃垣の財閥の経営と共に、Ansyal、priere de l'ange(プリエールデランジュ)と
三足の草鞋を履く弟、尊夜。


そんな尊夜をサポートしながら、今も生活を続ける俺自身。


大学を卒業して、そのまま俺は尊夜をサポートすべく、
瑠璃垣コーポレートに名前を連ねた。


瑠璃垣伊吹【るりがきいぶき】付の補佐の一人として。


幸いにも、俺の親父にアイツの父さん。
そして最強の味方である、咲空良養母さん、アイツのばあさん。


そんなメンバーに支えられる俺と尊夜は、
好きなことをやりながら、過ごさせて貰ってる。


そんな瑠璃垣側の仕事も一段落して、
尊夜から与えられた、二日間の休み。


貴重な休みをいつものように、晃穂を呼び出して
お決まりのお店へと顔を出し、アイツの家に泊まりこんだ。


翌朝、ベッドから這い出すと、
先に目覚めたアイツが作る朝ご飯が、重さんのパンとテーブルに並ぶ。



「いただきます」
っと二人、声をそろえて、アイツは最初に美味しそうに重さんのパンを口に頬張る。


俺の前で美味しそうに重さんのパンを食べる晃穂。

そんなアイツを真っ直ぐに見つめる俺の視線。




美味しそうに食べるよなー。





この世の至福を得たように、
目を細めながら嬉しそうに、重さんのパンをかぶっと頬張る
アイツの、そんな些細な仕草にも心奪われる俺。


「えっ?何?紀天?
 何かついてる?マ、マヨネーズ?」


っと視線に気が付いた途端に慌てだすアイツ。

右手の指先が口元を拭うものの、
マヨネーズなんてついてるはずもない。


「えっ?ついてないじゃん。
 紀天のバカ」

「バカってなんだよ。
 晃穂、それは八つ当たりだろ。

 俺は何も言ってねぇじゃん」


< 127 / 245 >

この作品をシェア

pagetop